「福は〜、ウチ!」
 節分のかけ声も響き終わらないかのうちに、二月もほとんどが過ぎた感だ。春先の強い風に乗って、時間はごうごうと過ぎてゆく。梅の咲き具合はいま盛りなるも、次はさくらが待ち遠しい(その前に、花粉症の季節を乗り越えなければ!)。
 2月24日、大阪府羽曳野市にある「陵南の森公民館」にて、「にこ二胡ふれあいコンサート」が開かれた。
 外気温は6度。記録的な暖冬の中にあっては割と寒い日ではあるが、会場の熱気たるや相当なものである。約200席の会場はほぼ満席となり、後方には立ち見まで出ている。すっかり根付いた感のある中国音楽の人気ぶりだ。

 舞台にその姿を現した本日の奏者たちは、向かって右から、琵琶の何歓(か・かん)さん、揚琴の付虹(ふ・ほん)さん、そして二胡の王秀華である。真っ赤なチャイニーズ・ドレスといういで立ちで、すぐさま「喜洋洋」の演奏を開始した。この色彩、このノリ。中国を多少知る者ならピンと来たことだろう。ことし農暦の正月は2月18日。つい1週間前のことであったのだ。

 それにしても、この真紅の衣装、3人そろえばなおさら華やかだ。3年ぶんの正月が一度にやって来たかのように。

 続いて「茉莉花」の演奏。茉莉とは、ジャスミンの意で、先のアテネ五輪閉幕式典では、2008年北京五輪の予告として演奏された曲。
「演奏したい人は、きょう、しっかり録音して帰ってください。」
 会場は、王秀華のMCにどっと沸いた。いったい、誰に対するメッセージなのやら?
「さあ、音楽の旅に出かけましょう。」
 続く曲目は「シルクロードのテーマ」。中国楽器のみで構成される演奏は、むしろ新鮮である。


 この後、舞台には揚琴と二胡が残り、「葡萄熟了(ぶどうが熟れたら)」、「賽馬(競馬)」の演奏と相成った。二胡のメロディーと揚琴のリズム。二つの楽器は息もぴったりに、会場の空気を震わせている。「賽馬」の軽やかな演奏をもって、第一部は終了。

 第二部は何歓さんの琵琶、付さんの揚琴、各々ソロ演奏で幕を開ける。そしていよいよ、青のチャイニーズ・ドレスで王秀華が登場。ソロ演奏をうまく挟んで、演奏を途切れさせずに衣装の入換が完了した。そういえば会場ではサンドイッチが振舞われていた。今年の挟み運勢(?)は良好だ。次に、挟むものといえば二胡の弓である。舞台では王秀華の二胡解説が始まっている。


「この弦の間に弓を挟むのが信じられなくて、...。」
 確認のため、わざわざ舞台に上がるお客様もあります、とのこと。
 客席は再び、どっと沸いた。秀華トークは加速する。

「二胡はアー、フー(Er hu)。」(客席:「アー、フー!」)
「揚琴はヤン、チン(Yang qin)。」(客席:「ヤーン、チン!」)
「琵琶はピー、パー(Pi pa)。」(客席:「ピー、パア!」)

 いつの間に中国語教室が始まったのだろう。

 再び3人の奏者がそろった楽団は、「蘇州夜曲」の演奏に入った。

 夢の船歌 鳥の唄...

 不意に客席から歌声がおこる。
 さっきの中国語教室は、一種の発声練習だったのかな。何とも言えぬノリの良さに感心してしまった。

 合唱つきのまま、「花」、「涙そうそう」の演奏を過ごし、アンコール曲の「川の流れのように」を以って、本日の演奏会は幕引きとなる。春まだ浅い東大阪の平野に、歌声と演奏が幾重にもこだましていた。

文責/写真 Shimpei Fukatsu
取材協力 陵南の森公民館グループ連絡協議会